院長ブログ blog

言葉のサプリ

「日本的霊性」より

国家主義と軍国主義が世の中をおおっていた戦前の日本でも、歴史の真相を見抜いていた人たちがいました。世界的仏教哲学者鈴木大拙もその一人でした。
師は、1944年、敗戦後の日本人の魂のよりどころとなることを願って「日本的霊性」という書物を書きました。
この書物の中で最も私の心をうったのは、法然上人と遊女の出会いの物語です。
ある遊女が法然に、「自分のような身の上の者に救いはあるのでしょうか」、と尋ねたところ、法然は言下に「卑下することなかれ。
本願をたのみて念仏せば、往生うたがいあるまじきよし」と答えたといいます。
この感動的な物語を、大拙師は、次のように語っています。

「法然と室の泊の遊君との会見は、日本霊性史の上に記録すべき一事である。数百万の人間が生死する戦争も世界霊性史上の事件であるが、(中略)、質の上から見れば、遊君の宗教意識に触れたものも、また世界の大事実であらねばならぬ。」